No.1 コードギアス1話

第一回は「コードギアス反逆のルルーシュ 1話 魔神が生まれた日」よりです。

シーン説明

1話に出てくるチェスの対局シーンは主人公ルルーシュの頭脳明晰ぶりを表すシーンとして出てきます。ルルーシュはチェスの代打ち(個人や組織の代理として賭博を行う者)として登場します。

ルルーシュが来るまで指していた二人、手前おじいさん側をルルーシュが引き取った(コードギアス反逆のルルーシュ1話より)

しかし到着した時点で味方の黒番は非常に厳しい局面な上、持ち時間を使い切っていて1手20秒以内に指さなければいけないという危機的な状況です、共に来た友人のリヴァルは「こりゃいくら何でも勝てないよ!」と言いますが、ルルーシュは9分で済むと宣言して席に着きます。そして最初に黒のキングを動かす手を指します。相手の貴族の男はキングから動かすルルーシュを見て小ばかにするように笑い、暗幕します。

キングを動かすルルーシュ(コードギアス反逆のルルーシュ1話より)

次にルルーシュにスポットが戻った時には宣言通り勝利を収めていました。「8分32秒の新記録!」と賞賛する友人リヴァルに対してルルーシュは「相手の持ち時間も短かったしな」とクールに言いながらも、「ぬるいんだよ、貴族って特権に規制しているだけだから」とアニメの世界観とも繋がるセリフで締めくくられます。

局面解説

ルルーシュが到着した時点の局面は以下の通りです。

ルルーシュが到着した時点の局面(コードギアス反逆のルルーシュ1話より)

駒が分かりにくいため、改めて以下の通りFENで書き起こしました。

r7/pp3p2/2P2n1k/P1Pp2p1/3Pp3/4NpPq/1R1B1P2/6K1 b – – 0 1

結論から言うと、この局面は黒の必勝です。ある程度の棋力の方ならば解ける Mate in 3です。念のため Stockfish でも解析をかけましたが、同じ結論です。

chess.com 解析機能の出力

手順的にもKg6から入ることが正しく、ルルーシュの黒キングから動かす手と一致します。

この詰み手順はある程度単純ではありますが、白ポーンがプロモーションしそうなことに囚われず、かつ盤面の端にいるルックをしっかりと活用するものです。戦略家で視野が広いルルーシュならばしっかりと詰みを決めて欲しい局面と言えます。

なお、アニメでは終局図は映っておらず、実際にどのような手順で決着したのかはわかりません。「8分32秒」で決着したというルルーシュの友人のセリフから、仮に Mate in 3 という短手数で決着した場合は時間の大部分は対局相手の考慮時間だったと思われます。(ルルーシュは1手20秒しかないため)

総評

このシーンのポイントは2点です。1) ルルーシュがピンチを華麗に救ったのは嘘 2) 黒キングから動かすことは最善手だった。

1) ルルーシュが到着した時点で実は黒の勝ち確の局面でした。よって、ルルーシュは勝たないとおかしい状況でバトンを渡されて期待通り勝ったという、ストーリー描写とはあまりマッチしない局面だと言えます。

2) 黒キングから動かすことは盤面真理的にも正しいです。アニメで後に描かれる、「王から動かないと部下が付いてこない」というルルーシュの信念を体現する、良い局面だと思います。

また、チェスの対局シーンで時計が黒から見て右側に置いてあります。これは実際のチェス大会の置き方と一致しており、好感が持てます。

対局時の盤駒の位置(コードギアス反逆のルルーシュ1話より)

余談

本シーンでキングを動かすルルーシュを対局相手がおかしな手だと笑ったように、ルルーシュがキングを積極的に動かす手を好むことはルルーシュの強い個性として描かれています。

しかしながら、実際はチェスにおいてキングが積極的に動くことは珍しくありません。現に、元チェス世界王者の Steinitz は「キングは戦う駒だ。使いなさい!」という名言を残しています。

終盤にキングを積極的に動かして勝利するプレイヤーを見て、ルルーシュに憧れてチェスをやっているのかな?と勘違いしないようにしましょう(笑)

この記事が少しでも面白いと思った方は、ページ下のいいねボタンのクリックをお願いします。作者の励みになり、次回の執筆意欲に結び付きます。
タイトルとURLをコピーしました